大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和27年(オ)785号 判決 1954年2月12日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

原判決の引用する第一審判決の認定によれば、本件当事者間に成立した売買の目的物である林野の大部分が正規の保安林であり、他の部分は正規保安林と相俟つて原告(被上告人)等その他の部落民の耕作する本件林地帯に接する畑一八町歩の防風林をなしている関係上、原告等において本件買収を拒んだが、戦争酣の当時の事情から軍部において使用する為の国家の買収なれば已むを得ないものと思惟し、原告等において買主を国家であると誤信して各自の所有部分につき売渡の意思を表示しこれに基づき買主側において所要の書類を作成して売主等の捺印を徴し茲に上告人を買主とする本件売買が成立したというのである。そしてかかる場合において、買主が国であるか上告人であるかは主観的にも客観的にも重要の事項に属するものと認むべきであるから、本件売買の買主についての被上告人等の前記錯誤を以て要素の錯誤であるとする原判示は相当であつて、この点に関する上告理由第一点の所論は理由がない。又原判決の引用する第一審判決の認定する本件契約締結の経緯に照し、被上告人等の前記錯誤につき同人等に重大なる過失なしとした原判示も亦相当であるから上告理由第二点の所論も理由がない。その他の論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例